旅するヴァイオリン vol.79 ~没後70年 ~(6/25)
ヴァイオリン:白井篤
ピアノ:大須賀恵里
「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第3番(グリーグ)」
このお二人の演奏で何度か聴いたことがあり、毎年秋のリサイタルにも上げておられます。そのたびに感想で『渾身の』と書いていた気がするのだけれど、いつもそう思うんだな。白井さんはそれほど『大見得切って』演奏する人ではないけけれど、それでもご自分の演奏がどういう曲で栄えるかはわかっているだろう・・・当たり前だ、プロなんだから。
そして長年の共演パートナーである大須賀さんも同じ。大須賀さんは不要な忖度などなさらない人である。譜面を丹念に読み込んで、ここではどのように演奏すべきかを演奏中にも共演者に伝える演奏をする。ある意味シビア・・・でもプロだし。
だからこそ、演奏の完成度が高いんですよ。偶にあるんだわ、なぁなぁの演奏であるとか、共演者を置き去りにするとかね。でもこのお二人にはそれはあり得ない。だから聴きに行くんです。
はい、さすがの圧巻のグリーグでございました。
「ロマンス(スヴェンセン)」
これは美しい曲です。グリーグで高揚した心を静めるかのような。こーゆーのをプログラミングの妙と言うのでありましょう。
「ヴァイオリンとピアノためのソナタ(R・シュトラウス)」
こちとらも一回りの年齢までカウントダウン。白井さんの演奏でこの曲を聴いた記憶がなく、しかしそうお話ししたらお二人とも「ずいぶん前に演奏したことがあるらしい・・・」ってそれも笑えるのだが、日々演奏のお仕事ですからね。それはいたしかたない。
私なんぞ昨日販売した商品すら忘れてしまうのだから(爆)。
しかし演奏者の記憶にあるのであれば、それは確かなことであり、幸いにもかつては毎日ブログを書いていたんで過去記録を検索。
まずヒットしたのは別の人の演奏だったけれど、そこには「白井さんがこよなく愛するこの曲」と書いてある。うへっ!こんなこと書いてるってことはこの曲について白井さんが書いたものを読んでいるか、それとも直接聞いているかのどちらかでしかない。だからまた探す。
あったよ~。
2009年の浜離宮でのリサイタルとその2ヶ月前のイギリス館。10年前じゃ忘れててもしょうがない・・・なんてことはないっ!深く反省しながらも思い出にふけるのはそこまで。
wiki によればR・シュトラウスはそれなりにヴァイオリンの演奏ができたらしい。それ故にかこの曲はヴィルトオーゾであるとも。しかしながら、私にとってR・シュトラウスは幸せの源の一つである。しばらく前に書いたが、私を勇気づけ奮い立たせるのがワーグナーである一方で、聴くと幸せになれるのがR・シュトラウスなんだなぁ。何でだろ?大野さんのティルのせいかもね。
とは申せ、誰かに幸せになってもらうのはなかなかに大変なことでありまして、演奏する側はかなり大変であるとは、以前から伺っておりました。今宵は演奏者様におかれましては、いささかムムムでありましたでしょうが、捲土重来ございますれば。
あ、最後になりましたが、サブタイトルの意味するところは今年がR・シュトラウスの没後70年だからであります・・・10年前まで生きておられたのですわね・・・私が生まれる。