徒然な日々・零式

クラシックの演奏会を中心にあれこれと書いていきます。

ベンジャミン:オペラ『リトゥン・オン・スキン』[日本初演]④(8/28・8/29)

最後は作品について。

ストーリーそのものは、それほどありえないものでもなく、不条理でもなく、まぁ西欧の伝承にはよくある話のような気もする。

カニバリズムなるものに、私が最初に接したのはシャルル・ペローの「眠れる森の美女」であり、その次は「ロビンソン・クルーソー物語」だった。小学生の時に読んだので、恐怖などは全くなく、そういう人種もあるのかと、淡々と受け止めていた。長じて犯罪としてのそれを知ると、今度は恐怖ではなくて嫌悪感・・・かな。

愚息が「ベニスの商人」を「ごねれば借金を返さなくてもいいという話」と言ったことがあるが、それをまねれば「傲慢でいると破滅する話」ってか。

テクストが秀逸であるがゆえに、聴衆はその瞬間に誰が何を演じているのか混乱するかも知れないが、ストーリーとしては平易なものであるがゆえのテクストかも知れない。

私にはキリスト教に関する知識や経験がなく、気になるときに調べるだけなので、天使の役どころが何を意味するところなのか、今ひとつ理解できなかった。天使が12世紀の人間に憑依してるわけではないので、語り部の時には傍観者だろうと思ったのだが、それでいいのか?

そして最後のテクストは「天使はアニエスを眺めている」だったかな。

つまり、これは救済とか開放とか、そういうことは関係ないのか?それゆえに、解説などに不条理という言葉があったりするのか。

・・・といささか理屈をこねてしまったが、私にはとても面白いオペラであったことはまちがいない。

初台での上演を願う。

サントリーホール RC1列6番・RA2列10番)